採択者・成果報告

平成26年 貞明皇后研究助成一覧

研究題目 及び 研究概要(申請時) 研究代表者 助成金額
(千円)
研究成果
報告書
1 新規玉繭品種の上蔟方法および玉糸を用いた製品の開発 農業生物資源研究所
主任研究員 飯塚 哲也
2,100 実施中
我々は、琉球多蚕繭由来の新品種の開発に取り組み、高率で玉繭を結繭する系統を育成した。しかしながら、解じょ等に問題があるため品種育成を続けている。また、千年蔟を用いた従来の上蔟法では労力がかかる上に繭質が劣るため、回転蔟による効率的な玉繭生産を目指している。さらに、養蚕農家における試験飼育を行い、得られた玉繭を用いて玉糸と織物の生産を行う。特に、玉糸繰糸において玉繭の粒付け数を工夫することにより、洋装に適した玉糸と製品の開発を行う。
2 太繊度糸を効果的に利用した高級和装製品の開発 泉織物有限会社
代表取締役 泉 太郎
2,000 実施中
太繊度糸は軽くて爽やかな肌触りをもつ一方で、温かさも併せ持つ特長的な素材である。この素材を効果的に利用して、桐生伝統の染織技術により一品物の高級和装製品とともに、土産物として気軽に購入できる小物類の開発も行う。2年目では、1年目で得られた部分精錬の知見を利用して、太繊度糸の特長を生かした桐生絞り着物や帯の設計・試作に本格的に取り組む。また、太繊度糸の組紐を利用した小物試作や、和紙の代わりに賞状等の素材に利用できる強い「コシ」が特長的な太繊度糸織物の開発にも挑戦する。
3 超極細生糸による世界一薄い織物作成技術の開発 齋栄織物株式会社
代表取締役 齋藤 泰行
2,000 実施中
齋栄織物㈱では、極細絹糸を使った世界一薄い絹織物を開発し、「第4回ものづくり日本大賞」の内閣総理大臣賞等の成果を得た。しかし、3眠蚕を使った8デニールの極細生糸は、中国からの安定した入手が難しくなっており、極薄織物の生産が困難な状況となっている。そこで、世界最薄の織物を製織するため、日本独自の細繊度蚕品種の極細1号を用い、万能型繰糸機によりこれまでにない8d以下の超極細生糸を繰製し、撚糸製織加工を含めた一貫した製造技術体系を確立する。
4 塩溶液繭繰糸法による生糸の実用化の可能性に関する研究Ⅱ-織物への応用- 京都工芸繊維大学
准教授 髙濱(一田)昌利
1,061 実施中
本研究の学術論文は、「一田・高橋:蚕糸・昆虫バイオテック80(3),237~242(2011)」に掲載されている。また25年度は「塩溶液繭繰糸法による生糸の、実用化の可能性に関する研究」で本会の助成に採用され、「ニットとしての実用化」を検討した。26年度は「織物への応用」を検討する。蚕3000~4000頭を飼育し、生糸を作成し、経糸・緯糸ともに、塩溶液繭繰糸法による生糸を用いた織物を作成する。作成された織物について力学的性質(KES法)、洗濯試験、染色試験を行う。
5 天蚕の優良系統の育成と実用化に関する研究 信州大学繊維学部
教授 梶浦 善太
2,000 実施中
これまで天蚕農家から糸が多くとれる天蚕がほしいという要望が強くあった。私は交雑育種を試し、また大型繭の天蚕を探して、候補となる天蚕系統を見つけた。さらに、飼育試験と繰糸試験を行い、交雑育種や選抜育種によって優良で安定した形質をもつ天蚕をつくる。天蚕の優良系統としては、1.大型繭の系統、2.繭色の変異系統、3.雑種強勢を発揮する交雑組合せに適した系統である。これらの天蚕系統を安定して生産し、天蚕糸生産性の向上をはかる。
6 カイコ品種の殺虫性毒素タンパク質に対する感受性調査および抵抗性系統の選抜 農業生物資源研究所
上級研究員 宮本 和久
1,200 実施中
Bt毒素は、人畜に無害な殺虫剤に、さらには害虫耐性作物の作出に利用されているが、最近、Bt毒素抵抗性のチョウ目害虫が出現して問題となっている。そこで、チョウ目で最も研究が進んでいるカイコを用いて、Bt毒素抵抗性遺伝子の究明を行う。まず、当研究所で保存維持しているカイコ地域型品種など約150品種の、殺虫性毒素タンパク質の一種であるCry毒素6種類に対する感受性の調査を行い、抵抗性が強かった品種より、新たな抵抗性系統の作出を図る。
7 更なる高強度シルクを吐くトランスジェニック蚕の作出 信州大学繊維学部
教授 中垣 雅雄
1,500 実施中
蜘蛛糸の中でも牽引糸(1-1.8GPa)は強く、蜘蛛横糸(<0.5GPa)や家蚕糸(0.3-0.6GPa)よりも強い。この引張強度の違いは、シルクタンパク質のアミノ酸配列の違いに依存する部分が大きいと思われる。引張強度の強い牽引糸タンパク質の遺伝子構造を十分に検討し、蚕に導入する遺伝子カセットを設計する。さらに、蚕における「導入遺伝子の発現効率」の向上を考慮したトランスジェニック蚕を作成して、家蚕糸の引張強度を遥かに超える高強度シルクを吐くトランスジェニック蚕の作出を試みる。
8 カイコの休眠性を自在にコントロールする人工飼料の開発 農業生物資源研究所
准教授 塩見 邦博
2,000 実施中
最近、我々は次世代卵の休眠性を決定できる2種類の人工飼料を発見した。この人工飼料に含まれる休眠性に影響を与える成分を同定するとともに、この有効成分のセンシングに関わる遺伝子の同定を試みる。さらに、これらの知見をもとに新しい人工飼料の開発を行う。これらの成果は、遺伝子組み換えカイコの作出を迅速・効率的に行うことを可能にし、特徴ある生糸の生産に貢献できると考えられる。
9 純国産繭上田紬生産のための効率的紬糸作成技術開発 特定非営利活動法人 和遊学舎
理事 金勝 廉介
1,327 実施中
紬糸に近い構造の極太繊度生糸を繰糸可能とする機器(「特殊生糸繰糸機」)が岡谷市・新増沢工業から供給されている。本研究では、この装置の使用法、とりわけ原料繭の煮繭条件を検討し、セリシンの取り除かれた、しかも繭糸の流れがより紬糸に近い糸の製造を目指す。具体的には、重曹水等で煮る/もしくは界面活性剤処理を施すことで予め十分にセリシンを除去した繭を装置に供給・加工することによる様々な問題点と可能性を検討する。これにより繭生産から織物製造にいたる一貫した国産繭上田紬生産の基礎とする。
10 シルク起毛加工技術の開発と洋装への応用に関する研究 純国産繭のフォーマル研究会
代表 平川 嘉一
1,996 実施中
高級な起毛織物としては獣毛を用いたカシミアが著名であるが、シルクの分野では、副蚕糸を原料とする絹紡糸を用いて起毛加工した高級毛布の商品化が行われているだけである。そこで、本研究では、入手方法が輸入のみで雑多な蚕品種の糸を原料とした絹紡糸ではなく、純国産生糸を使った長繊維で織り上げた生地に対する起毛加工技術を確立し、カシミアを超えるような国内およびヨーロッパ向けの高級服地の開発を行うことを目的とする。
11 クワコの繭糸特性を導入した実用蚕品種の選抜とその製品開発に関する研究発 東京農工大学
准教授 横山 岳
1,967 実施中
カイコとクワコの交雑種の繭糸は繊度が細く、強度が強いという特色があるので、この特性を活かし、手触り感の良好な織物の作出を行う。そのために、交雑種で問題となっている計量形質が小さいこと、交雑形式によっては耐病性が非常に低いことを育種、飼育方法を検討することによって改善させるなど、採卵から製品作成までの過程を検討し、クワコの繭糸特性を導入した実用蚕品種の選抜と織物製品の作出を行う。
12 国産繭を用いた組紐の製品開発に関する総合的研究 文化学園大学
共同研究員 道明三保子
2,000 実施中
帯締めを中心とする組紐製品段階から見た最もすぐれた絹素材の条件を設定し、これまでに選定した国産蚕品種の特性を活かすために各工程の技術を見直す。さらに、国産繭にふさわしい組紐商品を開発し、国産繭の魅力を十分伝えることのできるプレゼンテーションの方法を工夫する。