蚕が桑の葉を食べることはいうまでもありませんが、桑粉末を含む人工の飼料も開発されています。人工飼料を食べるときには、餌に引き付けられて、噛んでみて、飲み込むという3段階があるといわれています。そして、これらの段階を蚕がうまく進むようにするいくつかの物質が見いだされていますが、それらの物質は他の植物にも存在するものでした。 そこで、桑の葉に蚕の摂食を促進する未知の物質があるのではないかと考えました。着目したのは炭酸カルシウムです。桑の葉を顕微鏡でのぞくと、巨細胞があって、その中に炭酸カルシウムがつまっているのが見えます。桑の葉をよく食べることと関係があるのではないかと調べました。 実験のためにセルロース、寒天、水、炭酸カルシウムといった簡単な組成の餌を作り、蚕が餌の上に留まっている効果があるか、餌を食べて糞をする効果があるかを見てみると、予想どおり、蚕はこの餌によく留まり、よく食べました。この餌にショ糖が加えられると、炭酸カルシウムとの相乗効果で、さらに摂食は促進されることも分かりました。