一般財団法人 大日本蚕糸会
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大日本蚕糸会について
会頭挨拶

新会頭就任挨拶 松島浩道

新会頭就任挨拶
松島浩道

 本年6月28日に大日本蚕糸会の会頭に選任されました松島浩道です。
 この度、130年以上の歴史と伝統がある大日本蚕糸会に勤務させていただくことになりましたことを大変光栄に思っています。
 大日本蚕糸会が、今後とも、養蚕業と川下産業の連携支援や養蚕・蚕糸業に関する研究・技術開発などを通じて、我が国の蚕糸業の発展に貢献できるよう努めて参りたいと考えております。
 この場をお借りして、簡単に自己紹介させていただきますと、私は昭和57年に農林水産省に入省し、令和元年に農林水産審議官として退官するまで、農林水産行政に37年余携わりました。その後、令和2年から令和5年までの3年間は、在スロベニア日本大使館に大使として勤務しました。
 農林水産省では2度ほど大日本蚕糸会に関わる仕事を担当しました。平成17年から平成18年にかけて養蚕・蚕糸業の振興を所掌する特産振興課長を務め、また、平成26年から平成27年までは生産局長として大日本蚕糸会とお付き合いをさせていただきました。
 振り返ってみますと、私が特産振興課長を務めた時は、養蚕・蚕糸政策の大きな変革期でした。農畜産業振興機構(ALIC)では、昭和30年代から続いてきた蚕糸業務が平成20年に完全に廃止され、また、輸入生糸に対する調整金制度も廃止されました。このような状況の中で、国内の養蚕業を振興する方策として、蚕糸業と絹業の連携を支援する新たな事業が始まり、これを需要面から支えるため純国産絹マークの制度も発足しました。
 その後、養蚕農家、製糸業者をはじめ関係者の皆さんが、我が国の蚕糸業を振興するため懸命に努力されてこられたと承知していますが、これまでのところ、そのような努力が必ずしも蚕糸業の回復には結び付いていないのは大変残念なことだと思っています。平成17年の養蚕農家数は1591戸、収繭量は626トンでしたが、令和5年度にはそれぞれ146戸、45トンとなり、この20年足らずの間にそれぞれ1/10以下にまで減少してしまいました。このままでは、かつて我が国の経済発展を支えてきた歴史のある養蚕業、製糸業が消滅してしまうのではないかという強い危機感を持っています。
 一方で、近年は繭を繊維原料とするだけではなく、化粧品や食品の原料とする新たな用途を模索する動きもあり、また、国産繭の安全・安心やストーリー性に着目して、国産繭製品の製造・販売を目指すスタートアップ企業や工芸作家等も登場しています。
 大日本蚕糸会は、現在、令和3年度から令和7年度までの5年間を対象とする中期事業計画に基づいて、蚕糸功労者に対する表彰事業、蚕糸業・絹業の連携に対する支援、国産絹のPR、蚕糸業に関する試験研究事業等を実施していますが、これから約1年半をかけて、先ほど申し上げたような養蚕業・製糸業の現状や様々な新たな動きも考慮に入れつつ、次期の中期事業計画の策定に向けた検討作業を進めていく予定です。これまでの施策の成果を検証しつつ、関係者のご意見をよく聞いた上で、令和8年3月までに養蚕業、製糸業の今後の見通し等を踏まえた新たな中期事業計画(令和8年度~12年度)を策定して参りたいと考えています。
 現在、危機的な状況に直面している我が国の養蚕業、製糸業が、持続的に営まれることが可能となるよう努めて参りたいと考えておりますので、改めて、関係者の皆様方のご理解、ご支援をお願いいたしまして、私の就任のご挨拶に代えたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。