一般財団法人 大日本蚕糸会
一般財団法人 大日本蚕糸会

大日本蚕糸会について
会頭挨拶

年頭所感 松島浩道

年頭所感
松島浩道

 明けましておめでとうございます。
 本年も、我が国の蚕糸絹業の発展のため、皆様からのご期待にお応えして大日本蚕糸会がその役割を果たせるよう努めてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 大日本蚕糸会では、昨年の秋から現行の中期事業計画(計画期間:令和3年度~7年度の5か年)の見直し作業を始めています。現在、国内の養蚕農家はわずか146戸、繭の生産量は45トンまで落ち込み、今も減少が続いています。大日本蚕糸会では、これまで蚕糸業を支援するために様々な事業を実施してまいりましたが、これまでの事業をこのまま漫然と継続していると遠からず我が国から蚕糸業が失われてしまうのではないかという強い危機感を持っており、中期事業計画の抜本的な見直しが必要ではないかと考えています。
 昨年の10月には、養蚕農家、製糸業者、絹業関係者等を構成員とする提携グループの代表者の皆さんに集まっていただいて、我が国の蚕糸業の厳しい現状について共通認識を持っていただくとともに、直面している課題について意見交換していただきました。また、昨年末には全ての養蚕農家、製糸業者、蚕種製造業者を対象に、現在の経営の状況、課題、今後の経営方針等について調査を実施し、現在、その結果を分析しているところです。
 本年は、この調査結果を踏まえて、有識者のご意見も聞きながら、蚕糸業を支援するための新たな枠組みについて早急に検討していきたいと考えています。

 蚕糸業対策は平成20年に輸入糸調整金制度が廃止され、蚕糸・絹業グループに対して支援する枠組みに移行しましたが、それ以降も蚕糸業の衰退を止めることが出来なかった根本的な要因は、養蚕農家の高齢化が進む中で、養蚕農家の生産する繭の買取価格が生産コストを下回り収益性が改善しなかったため、後継者が育たず、また新規参入も極めて限定的であったことにあると考えています。
 将来にわたって我が国に蚕糸業を残していくためには、養蚕や製糸業に携わる方々が希少品種の生産等により国産生糸の差別化を図ったり、品質の更なる向上に取り組むなどこれまで以上に努力していただくことに加えて、消費者の皆さんに我が国の蚕糸業の厳しい状況に対する理解を深め、国産の絹製品の応援団になっていただき、国産の絹製品が生産コストに見合った価格で取引される環境を作っていくことが必要であると考えています。

 このため、大日本蚕糸会では、本年は消費者の皆さんに蚕糸業が近代日本の発展に貢献してきた歴史やその文化的な重要性を理解することを通じて、国産生糸の価値を認識していただくための活動を積極的に行っていきたいと考えており、当面、以下のイベントを予定しています。
(1)1月27日には、日本発のラグジュアリーブランドを育成するため羽田空港で「ジャパン・マスタリー・コレクション」を運営されている(株)羽田未来総合研究所の大西洋社長をお招きして、「匠の技、オール日本で支える」と題して講演をしていただく予定です。
(2)2月20日、21日には、国産繭を使用して生糸を製造している製糸業者による国産生糸の展示商談会を開催するとともに、明治以降の日本の蚕糸業を題材にしたドキュメンタリー映画「シルク時空を超えて」を上映する予定です。
(3)昨年末に、明治天皇の皇后であられた昭憲皇太后が明治4年の3月14日(旧暦)に宮中で御養蚕を始められたことに因んで、3月14日を「蚕糸の日」と定めました。
 今年の3月14日には、昨年秋に蚕糸功績賞を受賞されたお二人、宮崎県綾町で綾の手紬染織工房を営まれ天然藍染め技法を復活された秋山眞和氏、カイコの生理生化学的研究の第一人者である新保博博士をお招きして記念講演会を開催する予定です。

 大日本蚕糸会は、引き続き、我が国の養蚕業、製糸業が持続的なものとなるよう支援していきたいと考えておりますので、今後とも関係者の皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。
 改めまして、関係者の皆様の今年一年のご健勝とご多幸をお祈りしまして新年のご挨拶といたします。