
一般財団法人大日本蚕糸会は、養蚕、生糸などシルク産業に関係する研究や技術を広めるとともに、国産の絹製品の振興を図るための支援を行っている団体です。
設立は1892年(明治25年)です。幕末に横浜が開港されて以降、我が国の生糸は主要輸出品となり、全国に養蚕業、絹織物業が広がり、その輸出によって得られた外貨と共に、日本の産業の近代化、発展を支えました。
令和3年に放映されたNHKの大河ドラマ「青天を衝け」でも当時の蚕糸絹業の繁栄ぶりが描かれています。
その後、第2次世界大戦後の呉服着物ブームを経て、洋装化など生活様式の変化などに伴い、生糸需要が減少し、蚕糸絹業も縮小を余儀なくされてきています。
最近は、気候変動問題への関心が高まる中、地球にやさしい天然素材としての生糸に魅力を感じ、新たに養蚕を始める若手農家や企業、農福連携の一環として取り組む団体も出てきています。養蚕、製糸、織物を地域起こしに活かそうとする動きもあります。大日本蚕糸会は、技術指導、研修、意見交換会などの支援を行っています。
この2年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、催事、パーティーなど多くの人が集い、語らいあう機会が減り、着物需要も停滞していますが、ワクチン接種、経口治療薬などの開発普及が進めば、社会活動も徐々に以前の状態に戻っていくのではないでしょうか。これまで抑制されてきた対面での販売、サービス提供による消費も回復していくでしょう。
そんな期待の中、ロシアのウクライナ侵攻などにより、原油・エネルギー価格の高騰、輸入原材料価格など生産販売コストの上昇に悩まされています。必要なものはいつでも海外から調達できるという前提に懸念が生じています。海外からの供給網に対する不安も大きくなり、国内での調達生産へ切り替える動きが出てきています。
大日本蚕糸会は、国内の蚕糸と製糸、絹織物など加工流通の事業者が提携してグループを作り、販売現場からの顧客ニーズを直接把握し、それに沿った製品づくりを行う取組みを進め、それに対し支援をしています。また、希少となった国産シルクであることが消費者にすぐ分かってもらえるよう、国産の生糸だけで作られた純国産の絹製品であることを示す「純国産絹」マークの普及に努めていきます。
さらに、養蚕、製糸、製造・加工・販売などシルクに関わる事業者、研究者、地方自治体など幅広い方々の参加を得て、情報共有や連携の強化を図る全国シルクビジネス協議会の事務局を努めています。その場も活用しながら、遺伝子組み換えカイコを利用した新たな機能を持った生糸、カイコの有用成分を活用した検査・診断薬、化粧品、食品など新規分野の開発にも力を入れていきます。
大日本蚕糸会には蚕糸科学技術研究所があります。蚕の飼育から製品までのプロフェッショナルが集結し、蚕品種、養蚕、製糸、絹などに関する研究・技術開発を行っています。大学、国公立研究機関とも連携して、様々なニーズに応えていきます。
コロナの感染が続いているため、何かとご不便をおかけしますが、これからも関係の皆様方のご支援ご協力を得ながら、日本の蚕糸絹業の発展に力を尽くして参ります。引き続きのご理解とご協力をお願い申し上げます。